現場の実態や児童教育のプロを目指す人へのアドバイスを、業界のプロに聞きました!
プロに進路相談
今回は日本児童教育専門学校の菊池副校長にインタビュー。児童教育の現場と保育士の現状に焦点を当てて、さらに現在の養成学校の様子や児童教育のプロフェッショナルを目指す人にとって大切なことなどを伺いました。
菊池一英 様/日本児童教育専門学校副校長
学生時代から、児童教育の現場で幼児体育講師を25年間務める。その後、神奈川県相模原市の保育園立ち上げスタッフとなり、副園長と主任を兼任しながら、クラス担任をして、日常的に幼児の教育に関わる。
現在、日本児童教育専門学校副校長として保育者養成の仕事に情熱を注いでいる。授業では「集団あそび」「保育内容<健康>」「幼児体育」などを講義し、より保育現場に生かせるあそびの数々を学生たちに伝えている。『仲間づくりのためのおもしろゲームあそび』『おもしろおにごっこ共にメイト)、『保育技能の探究』(共著・建帛社)など著書多数。
保育は「感情労働」、子どもへの愛情は惜しみなく!
保育士はまだまだ需要がある
Q. 早速ですが、保育士を目指している学生のことをいろいろお伺いしたいと思います。
先生の学校では、どのような学生が多いですか?
A. 本校の学生は6割が社会人や大学生などで、4割が18歳の高卒生という割合です。
20代の方が最も多いのですが、一般の仕事を続けながら通学する学生もいれば、一般大学の法学部などを出られた後に興味をもって入学する学生など、そのバックグラウンドはバラエティに富んでいますね。夜間部は50歳台の学生もいるんですよ。
今後はますます年齢層が上がり、社会人を経験した学生が増えていくのではないかと思っています。就職率が高く保たれているからかもしれませんね。
なにせ、現在0〜2歳の待機児童は約28,000人と言われています。児童教育などの仕事はまだまだ需要があるのです。
Q. 先生の学校では男性学生も多いと聞いているのですが…?
A. そうなんです。実は、本校の学生のうち、半分が男性なんですよ。
他の児童教育系の専門学校ではクラスに1割ぐらいしか男性はいません。それに、そもそも男性は入れないところも多いようです。しかし本校は、どちらかといえば積極的に男性の保育士を育成しているのではないかと思っています。
現在は父親も子育てにどんどん参加する風潮にありますよね。保育園への送り迎えを男親がすることも珍しいことではなくなってきています。こういった、育児に関わっていきたい父親にとって、園に男の先生がいることはとても安心するようなんですね。
ある園では、男の先生がリーダーになって「親父の会」という男の育児や家事を応援する集まりをやっているそうですよ。なんでも、みんなでスノコを作ったりしているとか。楽しそうじゃないですか?
こういう話を聞くと、男の先生のおかげでもっともっと父親が地域社会に参加しやすくなるのではないかと思ったりするんです。
ですから、女性の先生はもちろんのこと、我々は男性もさらにたくさんの人材を現場に送り出していきたいと考えていますね。
Q. なるほど…。男性ならではのメリットがあるんですね。
A. しかし、基本的に現場でやることは男女ともに同じですよ。しかし女性に比べて、少しアクティブな動きや野外活動などが期待されるかもしれません。一方女性に向いている業務もありますから、互いに補って現場を運営していけるといいですね。
また、昨今は保育園の形態が多様化しています。公立や社会福祉法人の園だけでなく、民間が経営する認可保育園がどんどん設立されてきているんです。特に東京都ではこの動きは加速しています。
こういった民間の園がもっと増えれば、当然これを経営したり、統括管理したりする人材が必要になりますよね。そう考えると、今後は保育をよく知る男性が経営面等で重用されるのではないかと思っています。
これまでキャリアアップが難しいと言われていたこの業界ですが、これからは男性も女性も、保育の世界で終身働いていくことができる。
そんな時代はすぐそこまできているのではないでしょうか。
確実に資格を取りたい人は養成校に集まる?
Q. さて、それでは次に保育士資格についてお伺いしたいと思います。
保育士になるには、資格取得が必要ですよね。取得方法について、以前と現在で変化はありますか?
A. ご存じのとおり、資格取得には2つの方法があります。ひとつは、当校のような指定養成校でしっかり学んで必要単位を取得して資格を取る方法。もうひとつは、国家試験を受験し、合格する方法です。
国家試験の受験者は年々増えています。しかし、5年前から試験日が1日だけになりましたので、合格率は少々落ちてしまったようです。それまでは各行政区で試験問題を作り、日にちをずらして、受験者が複数回受験できるようになっていたんですね。ですので、受験者は4回ないし5回程度試験を受けられたのですが、これが1回しか受けられなくなったので、合格者が一気に減ってしまったんですよ。国家試験は10科目取らなければならず、またピアノ等の実技試験もありますから、専門的な勉強を受けていない方や、通信教育だけの方にとっては、ハードルが高いのかもしれませんね。
そこで、確実に資格を取りたい人が本校のような指定養成校に集まってきています。本校では特に、夜間部にこういった学生が多いです。
最近世間では夜間部自体が少なくなってきているし、本校は駅に近く立地もいいので、働きながら資格を取りたい学生にはちょうどいい場所なのではないかと思います。実際、本校の夜間部の学生のうち1/3は既に保育園で働いていますよ。当校が紹介したアルバイト先で働いている学生も大勢います。
Q. アルバイト先や就職先など、進路を相談される学生さんに対してのアドバイスや心掛けていることはありますか?
A. まずは就職先・勤務先をよく調べることです。私どもとしてはやはり、当人と保育園がしっかりマッチングしたところに行ってほしいですからね。
園がどのような基本コンセプトで運営しているのか、夜間保育はどの程度あるのか、預かる子どもたちはどんな子どもたちなのか、両親の仕事はどのようなものか、施設や給食の内容まで徹底的に調べます。
先ほども少し触れましたが、従来と異なり、今は園の形態が多岐にわたっています。
ただ単に資格があるからとか、お給料がよさそうだからといって就職やアルバイトをするのではなく、下調べをしっかり行って、その上で自分が本当にそこで働きたいか、モチベーション高く働いていけるかどうかを見極めることはとても重要なことです。この点については徹底的に指導していますね。
ブレない軸を持って就職しよう
Q. もう少し保育士の就職事情について深くお話を聞きたいと思います。
卒業後の主な就職先はどこでしょうか?
A. 公立の保育園に行く学生もいますが、やはり圧倒的に社会福祉法人経営の民間の園が一番多いですね。都の認証保育園に就職するケースも増えてきました。
当校では幼稚園教諭の資格を取得することもできますので、資格を取った学生は幼稚園や認定こども園に就職する場合もあるようです。
また、資格を持つと児童養護施設や乳児院、各種障害児施設などで働くことも可能になります。特に児童養護施設は常に人手不足になっています。施設自体が少ないこともあるのではないかと思います。
こういった施設の場合は、保育園のように集団の子どもたちを見るのではなく、「その子の人生に寄り添いたい」といったマンツーマンの保育感を持っている学生が希望することが多いと思います。
実は、一般企業に就職する学生も存在します。ディズニーランドやアンパンマンミュージアム、赤ちゃん本舗など子どもに関わる企業からの求人は毎年のようにありますよ。
保育士は幼児の発達過程をきちんと学んでいる職業。母子への対応に優れた人材であるというところから、企業からも信頼を得ているのではないかと思います。
Q. 就職先がとても幅広いので驚きました。先生はどのようにして就職先を決めるのがよいと思われますか?
A. なんといっても、保育園実習、施設実習で学んだことを振り返ることがとても大切です。これだけ様々な場所に就職できるので、「なぜ保育園で働きたいの?」「なぜ養護施設で働きたいの?」という根本的な部分を明確にできることが重要です。
やっぱりその軸がぶれてしまうと、なかなか就職先を決めることは難しいのではないかと思います。逆に、軸がぶれなければ就職は大丈夫です。また、そうやって就職していく学生の方が真剣に仕事に取り組む傾向も高いと思っています。
保育は惜しみなく愛情を注ぐことが大切です。
Q. 保育士が現在、現場では求められていることはどんなことですか?
A. 子どもだけではなく、おじいちゃんやおばあちゃん、いろいろな障害を持っている人ともコミュニケーションがしっかり取れることが重要です。
そのため本校は、ボランティアで様々な活動に参加させるんですよ。カリキュラムにもボランティアは組み込まれていますし、資格取得だけではなく、ボランティアがきちんとできていなければ就職できない、とまで言っています。
また、子どものお母さんとしっかりとした会話ができることも大切です。「保護者とうまくコミュニケーションができない」と悩む人はすごく多いんですよ。
例えば、保護者への報告事項が満足にできなかったり、子どもの養育に関する指導ができなかったりして、困って相談にくることもありますよ。
お母さんの話を十分にヒアリングして、自分の思いを伝えることができる力が必要でしょうね。
Q. 最後に保育士になろうとがんばっている学生さんや、これから保育士になろうと思っている方へ、メッセージや保育士として重要なことをお聞かせください。
A. 保育は遊びで体を使いますよね、だから肉体労働もたくさんするわけです。
それから文字を書いたりパソコンで様々な資料を制作したりといった事務仕事もしなきゃいけないんですよ。
そして、もうひとつ、保育には「感情労働」といって相手の目を見て、相手の思いを受け取る仕事があるんですね。これは賃金に換算できない仕事ですが、実は保育の仕事を10だとしたら、6〜7割はこの感情労働に属するものなのではないかと思うんです。ですから、我々は常に、学生がそのことに気づいてもらえるような指導を心がけています。
保育は普通のことを普通にできないといけない仕事です。そして、そのうえで、子どもに惜しみなく愛情を注ぐ必要があるのです。これはお給料に反映されるものではありません。人間が人間を育てるうえで、必要不可欠な要素です。だからこそ、自分も親や恋人、家族など、様々な人に無償の愛で支えられているということを感じていてほしいですね。
気を抜くと子どもは死んでしまうことすらあります。自分の持っている力や気持ちを出し惜しみなく分け与えて、しっかりと支え、育てていかなくてはいけません。非常に緊張を強いられる仕事です。
例えば卒園の時に子どもが「ありがとう」と保育者に感謝を伝えてくれる。
小さなことかもしれないけれど、この一言のために惜しみなく愛情を注ぐことが保育なんですね。
はきはきと話す菊池先生。まっすぐなまなざしと保育の現場に賭ける情熱がとても印象的でした。保育の現場では、ますます保育士の重要性がクローズアップされています。時代の変化によって保育士の在り方も変わっていますが、今も昔も保育士に求められるものは同じ。子どもを愛する強い気持ちなのですね。素晴らしいインタビューをありがとうございました。